イベントバーナーで公開されていたキャライベントストーリー「愛を届ける笑顔」です。
最初は書き写していたため、一人称が「あたし」から「私」に変わっていたり、「すべて」が「全て」になっていたりする箇所があります。(語り部と口語で使い分けてかも)
また、途中からスクリーンショットの読み取り機能でコピペしたため、「…」が「・」になっていたり、不自然な改行が入っている場合があります。
できる限り復元を試みますが、完全ではない点をご了承ください…ごめんねT.T
復元にご協力いただける方がいれば、ぜひよろしくお願いします!
「あたしは他人の感情がわかります。憎しみ、悲しみ、苦しみ、そして愛。すべての感情に丸ごと寄り添う能力を持っています。あたしはこの能力を、神に授けられた祝福だと思っています。他人の苦しみを知って、共感して、彼らを救うための祝福。だから無性の愛を広めるために、聖戦十次会の大司祭になったんです。
大司祭とはいえ、信徒たちにあって愛を伝えるだけで、他の長老や十時卿ほどの実権はありません。それでもいいんです。見知らぬ人々の間に立ち、何の目的もなく愛を語るのも、誰かにとって必要なことですから。
打ち明けられた悩みを誠心誠意聞いて、その苦しみに共感して、愛を届けること。それがあたしにできる全てだと思っていまして。マネージャーのソフィアも傍で一生懸命手伝ってくれて、本当に感謝の気持ちでいっぱいの日々でした。
でもある日、とある信徒の方にであいました。娘さんがならず者に誘拐されたと、でもどの長老も助けてくれないと、娘さんを失った苦しみと喪失感が全身に伝わりました。今回だけは、ただ慰めの言葉をかけるだけじゃ足りないと思って…
初めて、自分の持ち場を離れようと決めたんです。」
「娘さんの行方を調べるために、元老の方々を訪ねました。私は大司祭だから、少なくとも無視されることはないと思ったんです。でも、帰ってくる言葉は全て同じでした。」
「このようなことに気を揉む必要はありません。」
「明日の礼拝の準備をされた方がよろしいのでは?」
まるで何も知らない子供に言い聞かせるような、嘲笑混じりの優しい態度でした。何度も足を運び心からお願いしましたが、全部無駄でした。司祭の役割は愛と希望を分かち合うことで、苦しむ信徒を見捨てるのは役目を放棄するに等しいと訴えても、彼らは首を横に振るばかりでした。何も知らないまま、漠然とした愛を与えることが、あたしの務めだと言って。その言葉は…思ったより刺さるものでした。反論したかったのに、同時に、その通りかもしれないと怖くなったんです。あたしは本当に、何の力もない温室育ちなのでしょうか
落ち込んだままヘイブンの路地裏に座り込むと、翼の元に何かが舞い落ちてきました。聖戦十次会が管理するカオスの通行相と、十時卿「レバン」の名前が書かれた紙切れでした。私と同じく温室育ちのままでは嫌だと思った誰かが勇気を出して渡してくれたのだと、感謝せずにはいられなかったのです。
レバン卿に会えば失踪した娘さんの行方が分かると思い、期待して足を運ぶと…近衛兵の方々に出会いました。彼らは同じ聖戦十次会の所属でありながら、なぜか娘を探していた信徒の方を威嚇しました。私は腰に刺していた銃を握りました。他人を守るために作られた、ピンク色の弾丸に愛を込める銃で、近衛兵の心臓を狙いました。もう何も知らないまま、目を背けたくなかったからです。
「恥ずかしながら、カオスに来るのは初めてです。一緒に来てくださってありがとうございます艦長。規模は小さい方だと聞きましたけど、それでも息をすると頭がガンガンします。それにここは悲しみと怒り、絶望に満ちていて…他人の苦しみが押し寄せてきます。幸せや嬉しさのような、正の感情は全く感じられません。初めてきたあたしもこんなに苦しいのに、信徒さんと娘さんはもっと辛いでしょうね…ゆっくりしている暇はありません。早く進みましょう。」
ディアナと共にカオスの奥へと進んでいくと、聖戦十次会の臨時哨所が現れた。2人の近衛兵が会話しており、天幕越しに耳を澄ませる。
「これで何回目の実験だ?」
「3桁は超えてるだろうな」
「そして全部失敗ってことだろ?レバン卿は実験隊をもっと確保しろとおっしゃったけど…」
実験体、失踪者、レバン。
3つの言葉がディアナの頭の中で一つに繋がった瞬間、不吉な想像がよぎる。レバン卿の信者たちを誘惑して実験を行っている。天幕越しの近衛兵から放たれる負の感情は、ディアナの推測を確信に変えた。
「艦長、彼らに詳細を聞かないといけません。娘さんを助けるためには、レバン卿が何を企んでいるか突き止めないと」
ディアナは震える手で銃を握り、前に出た。ディアナを見た近衛兵たちが驚愕して叫ぶ。
「ディアナ大司祭…?」
「本当に…レバン卿が、十時卿が信徒を誘惑したんですか?」
「くそ、だからカオスに誰も入れないよう、完全に封鎖しようと言ったのに!」
「レバン卿が仰っただろ。それはここで何かやってるって自白するようなものだと!」
ディアナの視線は近衛兵の先にある丘に留まった。少し前から伝わっていた負の感情は、近衛兵のものではなかった。
山積みになっている死体。その中に埋もれた、ボロボロの小さなクマのぬいぐるみ。実験体、失踪者、レバンを繋ぐ証拠が底なしの絶望を放っていた。銃を握った手の震えが止まる。ディアナの瞳には少しの愛も残っていなかった。ただ殺意だけが、カオスの霧のように瞳を覆っていた。
ディアナの攻撃で無力化された近衛兵たちは全てを白状した。哨所付近の死体はレバンの実験で犠牲にされた失踪者で、レバンは彼らを失敗作と呼んだと。あたしたちが探している子供は、今頃他の哨所で実験隊にされているはずだと。
「なぜそんな実験をするんですか?人の命よりも大切なものがあるんですか?」
「カオスを浄化すると言っていた。」
「この実験が成功すれば…より簡単にカオスを消せると…」
「…」
ディアナは哨所を離れた。殺意に導かれるまま進む彼女の後を追い、正しい道を案内しなければならなかった。襲ってくるモンスターに無言で銃口を突きつけ、引き金を引き、進んでいく。そよ風に揺れる木の枝の如く震えていた銃口は、いつからか正確にモンスターと近衛兵に狙いを定めるようになっていた。あゆみを勧めていたディアナは地面の水溜りを眺める。
「確かに自分の顔のはずなのに、初めて見る顔です…これもあたしなんでしょうね」
まだ殺意を宿した愛考え込んでいると、聞き覚えのある声が聞こえてくる。ディアナは顔を上げて周囲を見渡した。
「ディアナ様!」
「ソフィア…?ここにはどうやって…?」
「信徒の方に聞きました!私も手伝います、ディアナ様!」
ソフィアはディアナが前に進めるように、モンスターの注意を引いた。デイアナは何度も後ろを振り向き、さっきまで盲目的な殺意に満ちていたその瞳は不安で揺れていた。
「大丈夫です。ソフィアは強いから…きっと大丈夫。早くレバンを殺して戻りましょう」
ディアナはカオスの中で遭遇したレバンの部下たちを迷いもなく倒していった。求める情報はただ一つ、レバンの居場所だった。
すべての部下が逃げるか気絶するかした時、ただ一人が倒れたままディアナを見つめた。ディアナはその頭にまっすぐ銃口を突きつけた。
「レバンはどこにいますか?」
「い、いっそのこと…殺せ…」
ディアナは躊躇わず引き金に指をかけた。私が手を伸ばしていなかったら、発射された弾丸が近衛兵の頭を貫いていただろう。
「艦長、どうして…」
「落ち着いて、もう少しだけ話をしょう。人を信じるんだ」
「人を…信じる…?」
「あそこが本拠地です。そしてあの人はきっと…」
聖戦十字会の拠点と変わらない見た目をした哨所の周辺に、人々の姿が見える。奥の祭壇には例の徒に瓜二つの顔をした少女が縛られたまま横たわっていた。隣には、十字卿ほどの高位職と思われる服を身にまとった中年の男性。ディアナは男性のほうに近づいた。
「レバン!」
「…ディアナ。何も知る必要のない司祭が、ここに何の用で?」
「あなたを殺すためです」
ディアナは慣れた手つきでレバンに銃口を向けた。レバンは驚くこともな<ディアナに向き合った。殺意に満ちた視線と、殺意に慣れた視線がぶつかり合う。
「理由は分かった。だが帰るがいい。これから、より多くの者が救われる。その時私のことが理解できるだろう。」
「一つ聞かせてください。」
会話は平行線をたどっている。ディアナはレバンが自分を追い返そうとしても、引き金を引かなかった。最後に人を借じょうとした。
「あなたは誰を失ったんですか?」「想定外の質問だな…娘がいた。カオス要員だった。」「カオス要員…?」
「要員になった日、すべてのカオスを消すから期待しててと言われた。そして死んだ。私は娘の道志を受け継ぐつもりだ。娘の望み通り、すべてのカオスを排除する。これもまた、愛ではないだろうか。」
「いいえ。それは愛ではありません、レバン」
「なぜだ?」
ディアナは平行線をたどっていた会話に終止符を打った。
「愛は一方的なものではありません。相手を想う心が、他の誰かを傷つけるなら、それは愛とは呼べません。愛は…お互いがお互いを想う心なんです。」
銃を握るディアナの手が再び震え出した。瞳の殺意が消え、聖戦十字会の大司祭として語っていた愛が熱く溢れる。レバンは口を閉ざした。代わりに周りの部下たちが、声を上げて飛びかかってくる。
「艦長、やっとわかりました。私は最後まで人を信じてみたいです。たとえそれが…殺さなければならないと思っていた人だとしても」
レバンと部下たちは倒れた。ディアナが弾丸に込めた愛のエネルギーのおかげで命は無事だった。眠りについた彼らの傍らで、急激な疲労感に襲われたらしいディアナがふらつく。すぐに駆けつけ、彼女が倒れないように支えた。ディアナは薄っすらと微笑むと、小さく呟いた。
「ありがとうございます、艦長。では…娘さんを助けに行きましょう」
二人で拠点の奥にある祭壇に向かった。縄を解くと少女は涙を流し、ディアナの腕に抱かれた。
「司祭様、本当に怖かったです…助けてくれてありがとう…」
「もう安心してください。お母さんのところに連れていってあげますから。」
少女と共に哨所を後にした。しかしディアナの決意も虚しく、すぐに凶象な奇声が聞こえてくる。カオス中心部からモンスターの群れが押し寄せていた。少女一人だけなら連れて逃げられるが、倒れているレバンと部下たちが引っかかった。私たちがこのまま逃げたら、彼らは間違いなくモンスターに殺されるだろう。ディアナは先程まで殺意を抱いていたレバンを見た。彼を助けたくても、度重なる戦闘のせいで心身が疲弊していた。彼女は荒い息を吐き出す。ここで逃げても、誰も彼女を責めないはずだ。
「どうする?」
ディアナに問いかけると、彼女は銃を握りしめて答えた。
「もちろん助けます。みんなを」
「…理解できない。
ディアナ大司祭は私を憎み、殺そうとした。それぞれの見解が違ったのだから、それについて遺憾はない。それなのになぜ…彼女は我々を守っている?」
意識を取り戻したレバンは、目をぎゅっと閉じては開くのを繰り返しながら、哨所の外へ部下たちを運んだ。私はレバンがどんな人なのか知らない。しかしディアナが抱いている気持ちに共感し、それをレバンに伝えたかった。
「それはディアナのやり方ではないから。」
「…何だと?」
「殺意を抱いて相手を殺すことは、この宇宙では珍しいことではない。だから一人くらいは…殺意ではなく、愛を語ってもいいんじゃないか?苦しむ人を救い、皆を笑顔にするという理想論を…」
レバンが目を見開いた。そうならざるを得なかった。それは、彼の娘が語っていた理想論だったから。
「う…」
その瞬間、ディアナの姿勢が崩れた。疲れ果てた体が思い通りに動かないのは当然だった。その隙を狙ってモンスターが腕を伸ばし、最期を直感したディアナが目を固く閉じる。
「がはっ…」
体を投げ出して、ディアナの代わりにモンスターの攻撃を受けたレバンが血を吐いた。ディアナは急いで銃を撃ってモンスターを処理した。彼女の足元で、レバンの体が冷たくなっていく。
「どう…して?」
「何をしている、ディアナ大司祭。見込みのない者は諦めて、生き残れる者たちを守れ。それが…『小』の犠牲を背負った『大』の義務だ。」ディアナの愛に満ちた瞳から大粒の涙がこぼれた。犠牲に応じて救いの手が届くかのように、多くの信徒達の声が背後から聞こえてきた。援軍だった。
私たちはヘイブンに戻った。少女は母の腕に抱かれて泣きじゃくり、母親はディアナに深々と頭を下げて感謝を伝えた。レバンはカオスで行方不明になったことになり、彼の部下たちは実験に関する一切を外しなかった。
…ディアナは彼らをしつこく追い回した。母親に謝罪をし、贖罪できるように。ほとんどはディアナを避けて逃げ回ったが、やがて数人が母親を訪ねた。他にもカオスに山積みになっていた死体と関係のある人のもとを訪ねて謝罪した。憎しみと怒り、殺意の代わりに話し合いを選んだディアナは、自分が守り抜いた愛がヘイブンの至る所に広がる様子を見て微笑んだ
「私はディアナ様のお話を聞きながら夢を育み、ディアナ様がおっしゃる愛に憧れてここまで来ました。だから…何があっても、私はディアナ様の味方です。私はディアナ様の熱烈なファンですから!」
ソフィアは顔を赤らめるとそそくさと走り去った。しばらく静まり返った聖堂の廊下を眺めていたディアナが振り向いた。
「…宇宙は広いです。そしてこの宇宙のどこかでは、レバンと同じょうなことをしている人がいるでしょう。ヘイブンのマスコット、名誉大司祭という地位では彼らに愛を伝えられません。だから、もっと広い世界へ進もうと思います。」
「どこを考えている?」
「まずは宇宙のあちこちを回って、カオスを減するカオス作戦艦に行こうと思います。そこで多くのことを見て聞いて、愛を施す方法を学びます。帝国所属で、名前は…ナイトメア号というらしいですけど、ご存知ですかあ?」
ディアナはいたずらをするようにわさとらしく質問を投げかけた。嘘はつけない性格だと思っていたので意外だったが、素直に乗ってあげた。
「ああ。そこの艦長もきっと君を歓迎すると思う。」
ディアナは声を出して笑い、空を見上げた。暮れゆく夕焼けの向こうで、ナイトメア号は依然として巡航中だった。
ディアナは出張司祭の名目でナイトメア号に搭乗した。長くは滞在しないと言っていたし、実際ヘイブンは数日も経たないうちに彼女を呼び戻した。
…ナイトメア号で観測できる愛がどれほど多いか測りきる前に旅立つ日が決まってしまった。ディアナならいつでもまた立ち寄れるだろうが、滞在時間が短かった分名残惜しい。私はディアナを連れて海岸へ向かった。一緒に海岸を歩く間、彼女の顔はずっと赤く染まっていた。
「ずっとヘイブンにいたままだったら、あたしはまた負の感情に囚われていたでしょう。だから出張司祭という名目でナイトメア号に来たんです。実はずっと疑問でした。それは明らかにネガティブでよくない感情なのに、どうして何度も思い出そうとしてしまうのか、分からなかったんです…でも、今なら分かります。」
私の隣に腰掛けたディアナが静かに肩を寄せた。そして手を伸ばし、ディアナと私の手が重なる。
微かに、ディアナの感情が伝わる気がした。ディアナはこの状況が少し照れくさいのか、もう片方の手で自分の髪をくるくるといじっている。
「単純に希望と愛を語るだけでは不十分でした。愛を、希望を叫ぶには…それと相反する感情も知らなければならないんです。怒りに、憎しみに、殺意に呑み込まれてもなお愛を語れるなら、それこそが真の愛ですから。」
「悩む必要はない。それらも全部含めて君なんだから。」
「やっぱり艦長は…あたしと気が合いますね。言いましたよね?愛とは一方的じゃなくて、お互いがお互いを想う心だとそういう意味で、これほど気が合うということは…お互いのことをよく知っていて、深く想い合っているという意味ですから。これも、愛ですねえ!」